2005年4月30日発達障害者支援法 (2004.12.03)
発達障害者支援法
目次
第一章 総則(第一条―第四条)
第二章 児童の発達障害の早期発見及び発達障害者の支援のための施策(第五条―第 十三条)
第三章 発達障害者支援センター等(第十四条―第十九条)
第四章 補則(第二十条―第二十五条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条
この法律は、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることにかんがみ、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定めることにより、発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条
この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
2 この法律において「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。
3 この法律において「発達支援」とは、発達障害者に対し、その心理機能の適正な発達を支援し、及び円滑な社会生活を促進するため行う発達障害の特性に対応した医療的、福祉的及び教育的援助をいう。
(国及び地方公共団体の責務)
第三条
国及び地方公共団体は、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活の促進のために発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることにかんがみ、発達障害の早期発見のため必要な措置を講じるものとする。
2 国及び地方公共団体は、発達障害児に対し、発達障害の症状の発現後できるだけ早期に、その者の状況に応じて適切に、就学前の発達支援、学校における発達支援その他の発達支援が行われるとともに、発達障害者に対する就労、地域における生活等に関する支援及び発達障害者の家族に対する支援が行われるよう、必要な措置を講じるものとする。
3 発達障害者の支援等の施策が講じられるに当たっては、発達障害者及び発達障害児の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)の意思ができる限り尊重されなければならないものとする。
4 国及び地方公共団体は、発達障害者の支援等の施策を講じるに当たっては、医療、保健、福祉、教育及び労働に関する業務を担当する部局の相互の緊密な連携を確保するとともに、犯罪等により発達障害者が被害を受けること等を防止するため、これらの部局と消費生活に関する業務を担当する部局その他の関係機関との必要な協力体制の整備を行うものとする。
(国民の責務)
第四条
国民は、発達障害者の福祉について理解を深めるとともに、社会連帯の理念に基づき、発達障害者が社会経済活動に参加しようとする努力に対し、協力するように努めなければならない。
第二章 児童の発達障害の早期発見及び発達障害者の支援のための施策
(児童の発達障害の早期発見等)
第五条
市町村は、母子保健法(昭和四十年法律第百四十一号)第十二条及び第十三条に規定する健康診査を行うに当たり、発達障害の早期発見に十分留意しなければならない。
2 市町村の教育委員会は、学校保健法(昭和三十三年法律第五十六号)第四条に規定する健康診断を行うに当たり、発達障害の早期発見に十分留意しなければならない。
3 市町村は、児童に発達障害の疑いがある場合には、適切に支援を行うため、当該児童についての継続的な相談を行うよう努めるとともに、必要に応じ、当該児童が早期に医学的又は心理学的判定を受けることができるよう、当該児童の保護者に対し、第十四条第一項の発達障害者支援センター、第十九条の規定により都道府県が確保した医療機関その他の機関(次条第一項において「センター等」という。)を紹介し、又は助言を行うものとする。
4 市町村は、前三項の措置を講じるに当たっては、当該措置の対象となる児童及び保護者の意思を尊重するとともに、必要な配慮をしなければならない。
5 都道府県は、市町村の求めに応じ、児童の発達障害の早期発見に関する技術的事項についての指導、助言その他の市町村に対する必要な技術的援助を行うものとする。
(早期の発達支援)
第六条
市町村は、発達障害児が早期の発達支援を受けることができるよう、発達障害児の保護者に対し、その相談に応じ、センター等を紹介し、又は助言を行い、その他適切な措置を講じるものとする。
2 前条第四項の規定は、前項の措置を講じる場合について準用する。
3 都道府県は、発達障害児の早期の発達支援のために必要な体制の整備を行うとともに、発達障害児に対して行われる発達支援の専門性を確保するため必要な措置を講じるものとする。
(保育)
第七条
市町村は、保育の実施に当たっては、発達障害児の健全な発達が他の児童と共に生活することを通じて図られるよう適切な配慮をするものとする。
(教育)
第八条
国及び地方公共団体は、発達障害児(十八歳以上の発達障害者であって高等学校、中等教育学校、盲学校、聾(ろう)学校及び養護学校に在学する者を含む。)がその障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるようにするため、適切な教育的支援、支援体制の整備その他必要な措置を講じるものとする。
2 大学及び高等専門学校は、発達障害者の障害の状態に応じ、適切な教育上の配慮をするものとする。
(放課後児童健全育成事業の利用)
第九条
市町村は、放課後児童健全育成事業について、発達障害児の利用の機会の確保を図るため、適切な配慮をするものとする。
(就労の支援)
第十条
都道府県は、発達障害者の就労を支援するため必要な体制の整備に努めるとともに、公共職業安定所、地域障害者職業センター(障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)第十九条第一項第三号の地域障害者職業センターをいう。)、障害者就業・生活支援センター(同法第三十三条の指定を受けた者をいう。)、社会福祉協議会、教育委員会その他の関係機関及び民間団体相互の連携を確保しつつ、発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保に努めなければならない。
2 都道府県及び市町村は、必要に応じ、発達障害者が就労のための準備を適切に行えるようにするための支援が学校において行われるよう必要な措置を講じるものとする。
(地域での生活支援)
第十一条
市町村は、発達障害者が、その希望に応じて、地域において自立した生活を営むことができるようにするため、発達障害者に対し、社会生活への適応のために必要な訓練を受ける機会の確保、共同生活を営むべき住居その他の地域において生活を営むべき住居の確保その他必要な支援に努めなければならない。
(権利擁護)
第十二条
国及び地方公共団体は、発達障害者が、その発達障害のために差別されること等権利利益を害されることがないようにするため、権利擁護のために必要な支援を行うものとする。
(発達障害者の家族への支援)
第十三条
都道府県及び市町村は、発達障害児の保護者が適切な監護をすることができるようにすること等を通じて発達障害者の福祉の増進に寄与するため、児童相談所等関係機関と連携を図りつつ、発達障害者の家族に対し、相談及び助言その他の支援を適切に行うよう努めなければならない。
第三章 発達障害者支援センター等
(発達障害者支援センター等)
第十四条
都道府県知事は、次に掲げる業務を、社会福祉法人その他の政令で定める法人であって当該業務を適正かつ確実に行うことができると認めて指定した者(以下「発達障害者支援センター」という。)に行わせ、又は自ら行うことができる。
一 発達障害の早期発見、早期の発達支援等に資するよう、発達障害者及びその家族に対し、専門的に、その相談に応じ、又は助言を行うこと。
二 発達障害者に対し、専門的な発達支援及び就労の支援を行うこと。
三 医療、保健、福祉、教育等に関する業務(次号において「医療等の業務」という。)を行う関係機関及び民間団体並びにこれに従事する者に対し発達障害についての情報提供及び研修を行うこと。
四 発達障害に関して、医療等の業務を行う関係機関及び民間団体との連絡調整を行うこと。
五 前各号に掲げる業務に附帯する業務
2 前項の規定による指定は、当該指定を受けようとする者の申請により行う。
(秘密保持義務)
第十五条
発達障害者支援センターの役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、職務上知ることのできた個人の秘密を漏らしてはならない。
(報告の徴収等)
第十六条
都道府県知事は、発達障害者支援センターの第十四条第一項に規定する業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該発達障害者支援センターに対し、その業務の状況に関し必要な報告を求め、又はその職員に、当該発達障害者支援センターの事業所若しくは事務所に立ち入り、その業務の状況に関し必要な調査若しくは質問をさせることができる。
2 前項の規定により立入調査又は質問をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入調査及び質問の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(改善命令)
第十七条
都道府県知事は、発達障害者支援センターの第十四条第一項に規定する業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該発達障害者支援センターに対し、その改善のために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
(指定の取消し)
第十八条
都道府県知事は、発達障害者支援センターが第十六条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは同項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をした場合において、その業務の状況の把握に著しい支障が生じたとき、又は発達障害者支援センターが前条の規定による命令に違反したときは、その指定を取り消すことができる。
(専門的な医療機関の確保等)
第十九条
都道府県は、専門的に発達障害の診断及び発達支援を行うことができると認める病院又は診療所を確保しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項の医療機関の相互協力を推進するとともに、同項の医療機関に対し、発達障害者の発達支援等に関する情報の提供その他必要な援助を行うものとする。
第四章 補則
(民間団体への支援)
第二十条
国及び地方公共団体は、発達障害者を支援するために行う民間団体の活動の活性化を図るよう配慮するものとする。
(国民に対する普及及び啓発)
第二十一条
国及び地方公共団体は、発達障害に関する国民の理解を深めるため、必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。
(医療又は保健の業務に従事する者に対する知識の普及及び啓発)
第二十二条
国及び地方公共団体は、医療又は保健の業務に従事する者に対し、発達障害の発見のため必要な知識の普及及び啓発に努めなければならない。
(専門的知識を有する人材の確保等)
第二十三条
国及び地方公共団体は、発達障害者に対する支援を適切に行うことができるよう、医療、保健、福祉、教育等に関する業務に従事する職員について、発達障害に関する専門的知識を有する人材を確保するよう努めるとともに、発達障害に対する理解を深め、及び専門性を高めるため研修等必要な措置を講じるものとする。
(調査研究)
第二十四条
国は、発達障害者の実態の把握に努めるとともに、発達障害の原因の究明、発達障害の診断及び治療、発達支援の方法等に関する必要な調査研究を行うものとする。
(大都市等の特例)
第二十五条
この法律中都道府県が処理することとされている事務で政令で定めるものは、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)においては、政令で定めるところにより、指定都市が処理するものとする。この場合においては、この法律中都道府県に関する規定は、指定都市に関する規定として指定都市に適用があるものとする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、平成十七年四月一日から施行する。
(見直し)
2 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な見直しを行うものとする。
理由
発達障害者をめぐる状況にかんがみ、発達障害者に対し生活全般にわたる支援を図もってその福祉の増進に寄与するため、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
その他の関係法令【内容】
2006年4月4日学校教育法施行規則の改正
4月1日付けで学校教育法施行規則の改正があり、通級による指導の対象に、LD、ADHD、高機能自閉症が加わりました。
昨年の発達障害者支援法の施行により、自閉症、LD、ADHDは法律に規定されていますが、教育分野でも位置づけられたことは、歴史的な出来事です。 なお、従来「情緒障害」の中に含まれていた自閉症が独立して位置づけられたことも、大きな前進です。
<改正後の施行規則>
第73条の21
小学校若しくは中学校又は中等教育学校の前期課程において、次の各号の一に該当する児童又は生徒(特殊学級の児童及び生徒を除く。)のうち当該心身の故障に応じた特別の指導を行う必要があるものを教育する場合には、文部科学大臣が別に定めるところにより、第24条第1項、第24条の2及び第25条の規定並びに第53条から第54条の2までの規定にかかわらず、特別の教育課程によることができる。
<h3">2005年6月19日 障害者基本法の一部を改正する法律案に対する附帯決議 (2004.05.27)
障害者基本法の一部を改正する法律案に対する附帯決議 2004.05.27 参議院内閣委員会
障害者基本法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に向け万全を期すべきである。
一、障害者施策の推進に当たっては、障害者の個人の尊厳にふさわしい生活を保障される権利を確認した法第三条第一項の基本的理念を踏まえ、障害者が、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に、分け隔てられることなく参加できるようにすることを基本とすること。
二、障害者の雇用・就業、自立を支援するため、障害者の地域における作業活動の場の育成等を推進するとともに、併せて精神障害者の雇用率の適用・復職支援、在宅就労支援を積極的に推進するため、これらについて法的整備を含め充実強化を図ること。
三、障害者に対する障害を理由とする差別や権利利益侵害が行われた場合の、迅速かつ効果的な救済のために必要な措置を検討すること。
四、情報バリアフリー化の推進は、障害者等のコミュニケーションの保障に資するべきものであることにかんがみ、情報通信機器やアプリケーションの設計面のみならず、コンテンツや通信サービスについても、手話、文字、点字、音声等の活用による改善及び充実を促進すること。
五、障害のある児童・生徒とその保護者の意思及びニーズを尊重しつつ、障害のある児童・生徒と障害のない児童・生徒が共に育ち学ぶ教育を受けることのできる環境整備を行うこと。
六、「障害者」の定義については、「障害」に関する医学的知見の向上等について常に留意し、適宜必要な見直しを行うよう努めること。また、てんかん及び自閉症その他の発達障害を有する者並びに難病に起因する身体又は精神上の障害を有する者であって、継続的に生活上の支障があるものは、この法律の障害者の範囲に含まれるものであり、これらの者に対する施策をきめ細かく推進するよう努めること。
七、国連における障害者権利条約の策定等の動向を踏まえ、制度整備の必要性について検討を行うこと。
右決議する。
2005年6月19日 障害者基本法 (2004.06.04)
障害者基本法 2004.06.04 改正
附帯決議に「発達障害」の文言が織り込まれた