発達障害者支援法【内容】

2016年8月1日発達障害者支援法改正までの経緯

2016年8月1日発達障害者支援法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(2016年5月24日)
参議院厚生労働委員会

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

  1. 発達障害と診断された者及びその家族が適切な支援を受けることができるよう、ペアレントメンター等による心のケアも含めた相談・助言体制構築の支援を強化すること。その際、個々の障害の特性や家庭状況に対応できるよう、夜間等の相談・助言体制の構築についても留意すること。
  2. 小児の高次脳機能障害を含む発達障害の特性が広く国民に理解されるよう、適正な診断や投薬の重要性も含め、発達障害についての情報を分かりやすく周知すること。特に、教育の場において発達障害に対する無理解から生じるいじめ等を防止するには、まずは教職員が発達障害に対する理解を深めることが肝要であることから、研修等により教職員の専門性を高めた上で、早い段階から発達障害に対する理解を深めるための教育を徹底すること。
  3. 発達障害者の就労機会の確保及び職場定着のためには、個々の障害の特性に配慮した良好な就労環境の構築が重要であることに鑑み、職場におけるハラスメント予防のための取組やジョブコーチ等を活用した相談・助言体制の一層の充実を図ること。
  4. 発達障害者が持つ障害の程度は個人によって異なるため、就労及び就学を支援する上では主治医や産業医等の産業保健スタッフ及び学校医等の学校保健スタッフの役割が重要であることに鑑み、これらの関係者が相互に連携を図りながら協力できる体制を整備するとともに、産業保健スタッフ及び学校保健スタッフが受ける発達障害者の雇用や就学に関する研修について必要な検討を行うこと。
  5. 地方公共団体により障害者手帳の取扱いの状況が異なること及び発達障害者の多くが障害者手帳を所持していないこと等の実情に鑑み、障害者手帳について在り方を検討すること。
  6. 個々の発達障害の原因究明及び診断、発達支援の方法等に関する調査研究を加速・深化させるとともに、発達障害に関する症例を広く把握することにより、不足している分野における調査研究に重点的に取り組むこと。また、これら調査研究の成果や国際的動向等も踏まえ、常に施策の見直しに努めること。その際、発達障害の定義の見直しにも留意すること。

2005年7月6日発達障害者支援法成立までの経緯

発達障害者支援法の成立について

12月3日、永年の懸案であった「発達障害者支援法」が成立しました。
この成立に関わりご尽力下さった発達障害者の支援を考える議員連盟の皆様をはじめとして、関係行政当局の方々、更には、障害関係団体の方々、そして全国各地で取り組んでいただいた各支部のみなさまに心から御礼を申し上げます。

「発達障害者支援法」は、発達障害を定義し支援の必要性を明らかにするものであり、支援システムを実現させるための根拠が明確となり具体的な支援システムを構築していく上で極めて大きな意義があると考えます。

決定した法律および関係事項をご紹介いたします。

  1. 「発達障害者支援法」
  2. 附帯決議
  3. 衆議院内閣委員会議事録(11/24)
  4. 参議院内閣委員会議事録(12/1)
  5. 参議院本会議議事録(12/3)
  6. 日本自閉症協会 声明文
  7. 発達障害者の支援を考える議員連盟
  8. 「日本発達障害ネットワーク」準備会厚生労働省宛5団体要望書文部科学省宛5団体要望書
  9. 発達障害者支援法の施行について
  10. 発達障害者支援法 政令
  11. 発達障害者支援法 省令
  12. 発達障害者支援に関する勉強会 第10回 New!

2005年4月30日発達障害者支援法の施行について<施行通知>

発達障害者支援法の成立について

「発達障害者支援法(平成16年法律第167号)」(以下、「法」という。)は平成16年12月10日に公布された。また、本日、法に基づき「発達障害者支援法施行令(平成17年政令第150号)」(以下、「令」という。)が、令に基づき「発達障害者支援法施行規則(平成17年厚生労働省令第81号)」(以下、「規則」という。)が公布され、いずれも本日から施行されるところである。法の趣旨及び概要は下記のとおりですので、管下区市町村・教育委員会・関係団体等にその周知徹底を図るとともに、必要な指導、助言又は援助を行い、本法の運用に遺憾のないようにご配意願いたい。なお、法の施行に基づいて新たに発出される関係通知については、別途通知することとする。

第1  法の趣旨

発達障害の症状の発現後、できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要であることにかんがみ、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定めることにより、発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増進に寄与することを目的とするものであること。(法第1条関係)

第2  法の概要

(1)  定義について

「発達障害」の定義については、法第2条第1項において「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」とされていること。また、法第2条第1項の政令で定める障害は、令第1条において「脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、言語の障害、協調運動の障害その他厚生労働省令で定める障害」とされていること。さらに、令第1条の規則で定める障害は、「心理的発達の障害並びに行動及び情緒の障害(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、言語の障害及び協調運動の障害を除く。)」とされていること。これらの規定により想定される、法の対象となる障害は、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)における「心理的発達の障害(F80-F89)」及び「小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F90-F98)」に含まれる障害であること。なお、てんかんなどの中枢神経系の疾患、脳外傷や脳血管障害の後遺症が、上記の障害を伴うものである場合においても、法の対象とするものである。(法第2条関係)

(2)  国及び地方公共団体の責務について

国、都道府県及び市町村は、発達障害児に対しては、発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行うことが重要であることから、発達障害の早期発見のため必要な措置を講じること。また、その者の状況に応じて適切に、就学前の発達支援、学校における発達支援その他の発達支援、発達障害者に対する就労、地域における生活等に関する支援及び発達障害者の家族に対する支援が行われるよう、必要な措置を講じること。発達障害を早期に発見することは、その後の支援を効果的・継続的に行っていくためのものであること。(法第3条第1項・第2項関係)

支援等の施策を講じるに当たっては、発達障害者及び発達障害児の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)の意思ができる限り尊重されなければならないこと。その際、本人や保護者に対して支援の内容等について十分な説明を行い、理解を得ることが重要であること。(法第3条第3項関係)

(3)  関係機関の連携について

発達障害者の支援等の施策を講じるに当たっては、医療、保健、福祉、教育及び労働に関する業務を担当する部局の相互の緊密な連携を確保するとともに、犯罪等により発達障害者が被害を受けること等を防止するため、これらの部局と消費生活に関する業務を担当する部局その他の関係機関との必要な協力体制の整備を行うこと。(法第3条第4項関係)

(4)  国民の責務について

国民は、発達障害者の福祉について理解を深めるとともに、社会連帯の理念に基づき、発達障害者が社会経済活動に参加しようとする努力に対し、協力するように努めなければならないこと。(法第4条)

(5)  児童の発達障害の早期発見及び早期の発達支援について

児童の発達障害の早期発見のために、市町村は、母子保健法(昭和40年法律第141号)第12条及び第13条に規定する健康診査及び学校保健法(昭和33年法律第56号)第4条に規定する健康診断を行うにあたり十分留意するとともに、発達障害の疑いのある児童に対し、継続的な相談を行うよう努め、当該児童の保護者に対し、医療機関等の紹介、助言を行うこと。また、発達障害児が早期の発達支援を受けることができるよう、発達障害児の保護者に対し、相談、助言その他適切な措置を講じること。都道府県において、発達障害児の早期の発達支援のために必要な体制の整備を行うとともに、発達障害児に対して行われる発達支援の専門性を確保するため必要な措置を講じること。(法第5条・第6条関係)

(6)  保育、放課後児童健全育成事業の利用及び地域での生活支援について

市町村が、保育、放課後児童健全育成事業の利用、地域での生活支援のために適切な配慮、必要な支援等を行うものとすること。(法第7条・第9条・第11条関係)

(7)  教育について

国、都道府県及び市町村が、発達障害児(18歳以上の発達障害者であって高等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校及び養護学校に在学する者を含む。)がその障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるようにするため、適切な教育的支援、支援体制の整備その他の必要な措置を講じるものとすること。また、大学及び高等専門学校は、発達障害者の障害の状態に応じ、適切な教育上の配慮をするものとすること。(法第8条関係)

(8)  就労の支援について

都道府県は、発達障害者の就労を支援するため必要な体制の整備に努めるとともに、公共職業安定所等の相互の連携を確保しつつ、発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保に努めるものとすること。また、都道府県及び市町村は、必要に応じ、発達障害者が就労のための準備を適切に行えるようにするための支援が学校において行われるよう必要な措置を講じるものとすること。(法第10条関係)

(9)  権利擁護について

国、都道府県及び市町村は、発達障害者が、その発達障害のために差別されること等権利利益を害されることがないようにするため、権利擁護のために必要な支援を行うものとすること。(法第12条関係)

(10)  発達障害者の家族に対する支援について

都道府県及び市町村は、発達障害者の支援に際しては、家族も重要な援助者であるという観点から、発達障害者の家族を支援していくことが重要である。特に、家族の障害受容、発達支援の方法などについては、相談及び助言など、十分配慮された支援を行うこと。また、家族に対する支援に際しては、父母のみならず兄弟姉妹、祖父母等の支援も重要であることに配慮すること。(法第13条関係)

(11)  発達障害者支援センターについて

平成14年度より、「自閉症・発達障害支援センター運営事業(平成14年9月10日障発第0910001号 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知)」が実施されてきたところである。今般、法の成立により発達障害者支援センターが本法に位置づけられ、都道府県等は「自閉症・発達障害支援センター」を「発達障害者支援センター」として指定することとなる。発達障害者支援センターの業務内容については、従来の「自閉症・発達障害支援センター」と同一のものであるが、センターにおける支援の対象者については、法における発達障害の範囲が学習障害や注意欠陥多動性障害なども含み、これまでよりも拡大することとなることから、その十分な対応を行うこと。(法第14条関係) また、発達障害者支援センターは、都道府県知事等により指定されるところとなり、職員の秘密保持、業務状況に関する報告の徴収、業務の改善に関する必要な措置、指定の取り消しが定められているため、その責務について十分認識の上、支援にあたること。(法第15・16・17・18条関係)

(12)  病院や診療所など専門的な医療機関の確保について

国、都道府県及び市町村は、発達障害の専門的な診断及び発達支援を行うことのできる病院又は診療所を地域に確保し、日頃から地域の住民に情報提供を行うこと等により、医療機関による支援体制の整備に努めること。(法第19条関係)

(13)  民間団体の活動の活性化への配慮について

国、都道府県及び市町村は、発達障害者を支援するためのさまざまな団体の活動の活性化を図ることは重要であり、その際、家族のみならず発達障害者当事者の団体の活動が活性化されるよう配慮すること。(法第20条関係)

(14)  国民に対する普及及び啓発について

国、都道府県及び市町村は、発達障害については、障害を有していることが理解されずに困難を抱えている場合が多いことなどから、発達障害者についての理解を深めることなどを国民の責務(第4条関係)と規定していることと併せて、具体的に発達障害に関する国民の理解を深めるための必要な広報及びその他の啓発活動を行うこと。(法第21条関係)

(15)  医療又は保健の業務に従事する者に対する知識の普及及び啓発について

国、都道府県及び市町村は、医療又は保健の業務に従事する者に対し、発達障害の発見のため必要な知識の普及及び啓発に努めなければならないこと。(法第22条関係)

(16)  専門的知識を有する人材の確保等について

国、都道府県及び市町村は、発達障害者への適切な支援を確保していくため、医療、保健、福祉、教育、労働等の分野において発達障害に関する専門的知識を有する人材を確保することが重要な課題であること。そのため、国においては医師については国立精神・神経センターにおいて、また、行政担当者、保健師、保育士等については国立秩父学園において、教員等については、独立行政法人国立特殊教育総合研究所において、研修を実施することとしており、都道府県等においても専門的知識を有する人材の確保に積極的に努めること。(法第23条関係)

(17)  調査研究について

国は、発達障害者の実態の把握に努めるとともに、発達障害の原因の究明、発達障害の診断及び治療、発達支援の方法等に関する必要な調査研究を行うものとすること。 そのため、独立行政法人国立特殊教育総合研究所においては、学校における発達支援の方法等に関する調査研究活動を行っている。(法第24条関係)

(18)  大都市等の特例について

法において、都道府県が処理することとされている事務のうち、法第6条第3項、法第10条第1項及び第2項、法第13条、法第14条第1項、法第16条、法第17条、法第18条並びに法第19条第1項の事務については、令第3条に定めるとおり、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項により指定都市(以下「指定都市」という。)が処理するものとすること。(法第25条関係)

2005年4月30日発達障害者支援法施行規則 (2005.04.01)

厚生労働省令第八十一号

発達障害者支援法施行令(平成十七年政令第百五十号)第一条の規定に基づき、発達障害者支援法施行規則を次のように定める。

平成17年4月1日
厚生労働大臣 尾辻秀久

発達障害者支援法施行規則

発達障害者支援法施行令第一条の厚生労働省令で定める障害は、心理的発達の障害並びに行動及び情緒の障害(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、言語の障害及び協調運動の障害を除く。)とする。

附則
この省令は、公布の日から施行する。

2005年4月30日発達障害者支援法施行令 (2005.04.01)

平成17年4月1日
政令第百五十号

発達障害者支援法施行令

内閣は、発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)第二条第一項、第十四条第一項及び第二十五条の規定に基づき、この政令を制定する。

(発達障害の定義)

第一条発達障害者支援法(以下「法」という。)第二条第一項の政令で定める障害は、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、言語の障害、協調運動の障害その他厚生労働省令で定める障害とする。

(法第十四条第一項の政令で定める法人)

第二条法第十四条第一項の政令で定める法人は、発達障害者の福祉の増進を目的として設立された民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の法人、社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二十二条に規定する社会福祉法人又は特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人とする。

(大都市等の特例)

第三条地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)において、法第二十五条の規定により、指定都市が処理する事務については、地方自治法施行令(昭和二十二年政令第十六号)第百七十四条の三十六の二に定めるところによる。

附則

(施行期日)

第一条この政令は、公布の日から施行する。

(地方自治法施行令の一部改正)

第二条地方自治法施行令の一部を次のように改正する。 第百七十四条の三十六の二第一項中「(昭和二十五年政令第百五十五号)」の下に「並びに発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)」を加え、「同法第十九条の七」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第十九条の七」に改め、「停止の命令」の下に「並びに発達障害者支援法第十条第二項の規定による就労のための準備に係る措置」を加え、「同法及び同令」を「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律及び同令並びに発達障害者支援法」に改め、同条第五項中「第十条の二第二項」の下に「並びに発達障害者支援法第五条第五項」を加える。

2005年4月30日発達障害者支援法案に対する附帯決議 (2004.12.01)

発達障害者支援法案に対する附帯決議
平成十六年十二月一日
参議院内閣委員会

政府は、本法の施行に当たり、障害者の個人の尊厳にふさわしい生活を保障される権利等を確認した障害者基本法第三条の基本的理念を踏まえ、次の事項の実現を期すべきである。

一、発達障害の早期発見は、発達障害者に対する早期の発達支援に資するためのものであることに留意し、障害者福祉、医療・保健、保育・教育にかかわる関係者の間における発達障害に関する理解の促進と認識の共有を図ること。

二、発達障害児に対する保育及び教育的支援と支援体制の整備に当たっては、発達障害児が障害のない児童・生徒とともに育ち学ぶことを基本としつつ、発達障害児及びその保護者の意思とニーズを最大限尊重すること。

三、発達障害者の就労を支援するための体制の整備を進めるに当たっては、障害者の就労の機会の確保に配慮し、障害者の雇用の促進等に関する法律について、必要な見直しの検討に速やかに着手すること。

四、発達障害者及びその家族に対する相談・助言体制を可及的速やかに拡充し、及び医療・保健、福祉、教育、就労その他の支援を行う専門的人材を早急に育成する必要性にかんがみ、予算措置を含む適切な措置を講じること。

五、発達障害者に対する支援の実効性を確保するため、障害者基本計画についての必要な見直しを行うとともに、都道府県及び市町村が策定する障害者計画についても本法の趣旨が活かされるように、必要な助言等を行うこと。

六、発達障害者に対する施策の在り方について、医学的知見や介助方法の向上等、国際的な動向等に十分留意し、常に見直しに努めること。

七、包括的な障害者福祉法制及び施策の検討に当たっては、障害者の自己決定権及び発達の権利を含む権利・利益の尊重と侵害に対する迅速かつ効果的な救済、経済、社会、文化その他の分野における分け隔てのない参画の促進と自立に向けたきめ細かい支援、障害を理由とするあらゆる差別の排除と差別のない社会の実現を基本的視点として行うこと。

右決議する