発達障害について

発達障害について

発達障害とは

すべての子どもたちはいろいろな可能性と個性をともに持って生まれてきます。発達障害というのは、そうした生まれながらの可能性や個性のあり方の1つだと私たちは考えています。それらは、基本的に脳の機能的な問題が原因で生じているものです。障害という言葉は、成長の中で「困ること」が生じる場合につけ加える言葉です。従って、その人の置かれた場所で「困ること」が全く生じないとしたら、リスクとしては何らかの障害になりうる問題があったとしても、障害ととらえる必要はありません。人々が発達障害の人たちのことを正しく理解し、その人が「困ること」をしっかり把握できることで、よりよく発達障害の人が生きていけることになります。そうやって、他者のことを考えられる世の中は、すべての人にとってもよりよい世の中になるだろうと信じます。
発達障害の代表的なものとして、知的障害、広汎性発達障害(自閉症)、高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群・高機能自閉症)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害などがあります。 発達障害といっても状態像は多様です。また、同じ診断名でも、子どもの個性や、発達の状況や年齢、置かれた環境などによって目に見える症状は異なります。さらに、発達障害があっても、その人ごとの人がらがあります。障害があるということでひとくくりにするのは間違いでしょう。一人一人のことをしっかり理解しようとすることが大切です。特に、自閉症を中核とする自閉症スペクトラムとも呼ばれる広汎性発達障害等の場合、その半数ほどは知的障害をもちません。そうした高機能では今まで一般的にとらえられていた障害というイメージとは一見異なるように見えます。しかし、幼少時からの一貫した指導がないと二次的な問題が大きくなり、知的な能力は高くとも社会適応は難しくなることがあります。発達障害の人たちの場合、問題となるリスクを減らしていく意味でも、彼らのよりよい人生を確かなものにする意味でも、早期からの専門的な療育や発達支援が必要です。

発達障害の主なもの

ここでは、発達障害者支援法が対象とする、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものをあげます。


 

広汎性発達障害(自閉症)

  • 社会性の障害(他者とのやりとりが苦手。他者の意図や感情が読み取りにくい)
  • コミュニケーションの障害(ことばの発達が遅れる。オウム返し。会話が一方的で自分の興味関心事だけ話す)
  • こだわり行動(興味の偏りと決まりきったパターンへの固執)
  • 生後3年以内に上記の3つの兆候が同時にある場合、自閉症と診断される。自閉症の主たる兆候は幼児期に顕著。
  • 人口の1%程度が該当する。
  • 半数程度は知的障害をもたない高機能群である。高機能群の場合、知的障害者の福祉制度の対象とはならない。

高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群・高機能自閉症)

  • 知的には標準またはそれ以上
  • 自閉症と同じ幼児期兆候をもつが、発達するにつれて症状が目立たなくなる。しかし、中核症状である社会性の障害は軽くはなく、社会的自立においては大きな問題をもつ。
  • 特に、コミュニケーションの障害はあっても、言葉の発達が遅れなかった場合、アスペルガー症候群と呼ぶが、高機能自閉症と区別することは臨床的には意味がない。
  • 不器用もしくは手先がとても器用

学習障害(LD)

  • 知的には標準またはそれ以上
  • 学力の著しい偏り(読み・書き・計算などの一部だけができない)
  • 注意集中力や落ち着きがない場合もある。また、不器用な場合もある。
  • 人口の5%程度が該当するというデータもある。
  • 知的障害者の福祉制度の対象とはならない。

注意欠陥多動性障害(ADHD)

  • 注意集中が難しい
  • 多動・落ち着きがない
  • 衝動的。思いついたら行動に移してしまう
  • 上記の3つが同時にある場合に診断される。発達的な個性の場合だけでなく、環境条件が悪い場合にも同様の状態像を見せる。
  • 薬物療法が著効する場合もある。
  • 人口の3%程度が該当する。
  • 知的障害者の福祉制度の対象とはならない。

発達障害の定義(発達障害者支援法による定義)

1、発達障害者支援法による定義
「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

[発達障害者支援法施行令] (2005.04.01)
(発達障害の定義)
第一条発達障害者支援法(以下「法」という。)第二条第一項の政令で定める障害は、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、言語の障害、協調運動の障害その他厚生労働省令で定める障害とする。

[発達障害者支援法施行規則] (2005.04.01)
発達障害者支援法施行令第一条の厚生労働省令で定める障害は、心理的発達の障害並びに行動及び情緒の障害(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、言語の障害及び協調運動の障害を除く。)とする。

2、文部科学省によるLD,ADHD,高機能自閉症の定義
LD(学習障害)
「学習障害とは,基本的には全般的な知的発達に遅れはないが,聞く,話す,読む,書く,計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を示すものである。学習障害は,その原因として,中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが,視覚障害,聴覚障害,知的障害,情緒障害などの障害や,環境的な要因が直接的な原因となるものではない。」
出典:学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会議(1999)学習障害児に対する指導について(報告)
ADHD
「ADHDとは,年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力,及び/又は衝動性,多動性を特徴とする行動の障害で,社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。また,7歳以前に現れ,その状態が継続し,中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。」
出典:特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議(2003)今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)

高機能自閉症
「高機能自閉症とは,3歳位までに現れ,他人との社会的関係の形成の困難さ,言葉の発達の遅れ,興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち,知的発達の遅れを伴わないものをいう。また,中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。」
出典:特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議(2003)今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)

発達障害の診断基準について

1.医学的診断基準

ICD-10(世界保健機関・WHO)とDSM-Ⅳ(アメリカ精神医学界)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/03/s0315-3i.html

2.文部科学省による判断基準

小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)、高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)(2004年1月30日)
資料1: LD、ADHD、高機能自閉症の判断基準(試案)、実態把握のための観点(試案)、指導方法より

LD(学習障害)

次の判断基準に基づき、原則としてチーム全員の了解に基づき判断を行う。

A. 知的能力の評価

▼全般的な知的発達の遅れがない。

個別式知能検査の結果から、全般的な知的発達の遅れがないことを確認する。
知的障害との境界付近の値を示すとともに、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論するのいずれかの学習の基礎的能力に特に著しい困難を示す場合は、その知的発達の遅れの程度や社会的適応性を考慮し、知的障害としての教育的対応が適当か、学習障害としての教育的対応が適当か判断する。

▼認知能力のアンバランスがある。

必要に応じ、複数の心理検査を実施し、対象児童生徒の認知能力にアンバランスがあることを確認するとともに、その特徴を把握する。

B. 国語等の基礎的能力の評価

▼国語等の基礎的能力に著しいアンバランスがある。

校内委員会が提出した資料から、国語等の基礎的能力に著しいアンバランスがあることと、その特徴を把握する。ただし、小学校高学年以降にあっては、基礎的能力の遅れが全般的な遅れにつながっていることがあるので留意する必要がある。
国語等の基礎的能力の著しいアンバランスは、標準的な学力検査等の検査、調査により確認する。

国語等について標準的な学力検査を実施している場合には、その学力偏差値と知能検査の結果の知能偏差値の差がマイナスで、その差が一定の標準偏差以上あることを確認する。

なお、上記A及びBの評価の判断に必要な資料が得られていない場合は、不足の資料の再提出を校内委員会に求める。さらに必要に応じて、対象の児童生徒が在籍する学校での授業態度などの行動観察や保護者との面談などを実施する。また、下記のC及びDの評価及び判断にも十分配慮する。

C. 医学的な評価

▼学習障害の判断に当たっては、必要に応じて医学的な評価を受けることとする。

主治医の診断書や意見書などが提出されている場合には、学習障害を発生させる可能性のある疾患や状態像が認められるかどうか検討する。

胎生期周生期の状態、既往歴、生育歴あるいは検査結果から、中枢神経系機能障害(学習障害の原因となり得る状態像及びさらに重大な疾患)を疑う所見が見られた場合には、必要に応じて専門の医師又は医療機関に医学的評価を依頼する。

D. 他の障害や環境的要因が直接的原因でないことの判断

▼収集された資料から、他の障害や環境的要因が学習困難の直接的原因ではないことを確認する。

校内委員会で収集した資料から、他の障害や環境的要因が学習困難の直接の原因であるとは説明できないことを確認する。

判断に必要な資料が得られていない場合は、不足の資料の再提出を校内委員会に求めることとする。さらに再提出された資料によっても十分に判断できない場合には、必要に応じて、対象の児童生徒が在籍する学校での授業態度などの行動観察や保護者との面談などを実施する。

他の障害の診断をする場合には次の事項に留意する。

注意欠陥多動障害や広汎性発達障害が学習上の困難の直接の原因である場合は学習障害ではないが、注意欠陥多動障害と学習障害が重複する場合があることや、―部の広汎性発達障害と学習障害の近接性にかんがみて、注意欠陥多動障害や広汎性発達障害の診断があることのみで学習障害を否定せずに慎重な判断を行う必要がある。

発達性言語障害、発達性協調運動障害と学習障害は重複して出現することがあり得ることに留意する必要がある。

知的障害と学習障害は基本的には重複しないが、過去に知的障害と疑われたことがあることのみで学習障害を否定せず、「A.知的能力の評価」の基準により判断する。

ADHD(注意欠陥/多動性障害)

以下の基準に該当する場合は、教育的、心理学的、医学的な観点からの詳細な調査が必要である。

A.以下の「不注意」「多動性」「衝動性」に関する設問に該当する項目が多く、少なくとも、その状態が6カ月以上続いている。

▼不注意

学校での勉強で、細かいところまで注意を払わなかったり、不注意な間違いをしたりする。
課題や遊びの活動で注意を集中し続けることが難しい。
面と向かって話しかけられているのに、聞いていないようにみえる。
指示に従えず、また仕事を最後までやり遂げない。
学習などの課題や活動を順序立てて行うことが難しい。
気持ちを集中させて努力し続けなければならない課題を避ける。
学習などの課題や活動に必要な物をなくしてしまう。
気が散りやすい。
日々の活動で忘れっぽい。

▼多動性

手足をそわそわ動かしたり、着席していてもじもじしたりする。
授業中や座っているべき時に席を離れてしまう。
きちんとしていなければならない時に、過度に走り回ったりよじ登ったりする。
遊びや余暇活動におとなしく参加することが難しい。
じっとしていない。または何かに駆り立てられるように活動する。
過度にしゃべる。

▼衝動性

質問が終わらないうちに出し抜けに答えてしまう。
順番を待つのが難しい。
他の人がしていることをさえぎったり、じゃましたりする。

B. 「不注意」「多動性」「衝動性」のうちのいくつかが7歳以前に存在し、社会生活や学校生活を営む上で支障がある。

C. 著しい不適応が学校や家庭などの複数の場面で認められる。

D. 知的障害(軽度を除く)、自閉症などが認められない。

高機能自閉症

以下の基準に該当する場合は、教育的、心理学的、医学的な観点からの詳細な調査が必要である。

A. 知的発達の遅れが認められないこと。

B. 以下の項目に多く該当する

▼人への反応やかかわりの乏しさ、社会的関係形成の困難さ

目と目で見つめ合う、身振りなどの多彩な非言語的な行動が困難である。
同年齢の仲間関係をつくることが困難である。
楽しい気持ちを他人と共有することや気持ちでの交流が困難である。

【高機能自閉症における具体例】
友達と仲良くしたいという気持ちはあるけれど、友達関係をうまく築けない。
友達のそばにはいるが、一人で遊んでいる。
球技やゲームをする時、仲間と協力してプレーすることが考えられない。
いろいろな事を話すが、その時の状況や相手の感情、立場を理解しない。
共感を得ることが難しい。
周りの人が困惑するようなことも、配慮しないで言ってしまう。

▼ 言葉の発達の遅れ

話し言葉の遅れがあり、身振りなどにより補おうとしない。
他人と会話を開始し継続する能力に明らかな困難性がある。
常同的で反復的な言葉の使用または独特な言語がある。
その年齢に相応した、変化に富んだ自発的なごっこ遊びや社会性のある物まね遊びができない。

【高機能自閉症における具体例】
含みのある言葉の本当の意味が分からず、表面的に言葉通りに受けとめてしまうことがある。
会話の仕方が形式的であり、抑揚なく話したり、間合いが取れなかったりすることがある。

▼ 興味や関心が狭く特定のものにこだわること

強いこだわりがあり、限定された興味だけに熱中する。
特定の習慣や手順にかたくなにこだわる。
反復的な変わった行動(例えば,手や指をぱたぱたさせるなど)をする。
物の一部に持続して熱中する。

【高機能自閉症における具体例】
みんなから、「○○博士」「○○教授」と思われている(例:カレンダー博士)。
他の子どもは興味がないようなことに興味があり、「自分だけの知識世界」を持っている。
空想の世界(ファンタジー)に遊ぶことがあり、現実との切り替えが難しい場合がある。
特定の分野の知識を蓄えているが、丸暗記であり、意味をきちんとは理解していない。
とても得意なことがある一方で、極端に苦手なものがある。
ある行動や考えに強くこだわることによって、簡単な日常の活動ができなくなることがある。
自分なりの独特な日課や手順があり、変更や変化を嫌がる。

▼ その他の高機能自閉症における特徴

常識的な判断が難しいことがある。
動作やジェスチャーがぎこちない。

C. 社会生活や学校生活に不適応が認められること。


Comments are closed.